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~手づくりオイルの長所と短所~日本の中のアーユルヴェーダ(3)

1キロの硬い薬草からオイルを作ろうとすると、16リットルの水を足して4リットルまで煮詰め、同量のゴマ油を足して、水分が完全になくなるまで火にかけ………

佐藤真紀子

911のテロ以来、インドから薬用オイルを持ち帰ることは難しくなった。手荷物でも機内預けでも、中身がオイルとわかると可燃物は不可ということで拒否されてしまうし、EMSなどでも引き受けてくれるところが少なくなった。そのため、一時は日本でオイルを作ることを考えて材料になる生薬を持ち帰ったこともあった。だが、これは大変な手間ひまなのだ。

例えば今、1キロの硬い薬草からオイルを作ろうとすると、16リットルの水を足して4リットルまで煮詰め、同量のゴマ油を足して、水分が完全になくなるまで火にかけなければならない。つまり8リットルが4リットルになるまで煮詰めて、その間ずっと鍋につきっきりで掻き回したり煎じ液を足したりという作業をしなければならないのだ。

この作業がはんちくだと、マッサージに使っても湿疹が出たり、気持ち悪くなったりするのだそうだ。煎じ液も一度にいれてはならず、少しづつ、少しづつ、おたまで入れて行き、完全に成分をオイルとなじませなくてはならない。そのためには何日もかかることもある。しかも、1回ではなく、これを何度も繰り返すほどよいオイルになる。

ケララの薬剤工房での、薬用オイルの製造工程は最低で21回……

佐藤真紀子

ケララ州で私が修行した病院では、自前の薬剤工房があり、そこでは最低21回、この同じ工程を繰り返して成分を濃縮した薬用オイルが作られていた。しかも、先代の時代には、48回も煮詰めるのが当たり前だったという。いまでもこの工房では、作業途中のオイルの温度が夜間に落ちないように、作りかけのオイルの鍋の中に、焼いた石をいれて、夜中の保温をはかっていた。インドから生薬を運んできて日本で手作りしようとしても、こうした丁寧な作業をくりかえした品質の物においつくわけがない。

人件費の高い日本では、同じクオリティのものを作ろうとしたら、どれだけコストがかかることか...。おそらく輸入するのと同じか、それよりも高くついてしまうだろう。それならば、インドから輸入した方が、インドの経済発展のためにもよいはずだ。

新しいオイルがよいとは限らない。古くなるほど効き目が高くなるものもある。

佐藤真紀子

薬用オイルはフレッシュでなければならないから、手作りして新鮮なものをお客様に使用すべきだ、という考えもある。だが、私はそうは思わない。ケララでアーユルヴェーダを学んできた人々の多くは、ココナツオイルベースの薬用オイルを前提にしているため、そう思われるのかもしれない。ココナツオイルはゴマ油よりも酸化しやすいからだ。だが、私が修行したケララの病院のように21回もきちんと精製過程をくりかえしたものは1~2年経ても悪くはならない。つい先日も2年前に彼らに作ってもらったムリベンナムをあけてみたが、臭いも効能も変わっていなかった。また、ギーの製剤など古くなるほど効き目が高くなるものもある。10年もののギーは、それだけでも傷を治す効果や精神疾患などへの効果が高くなっている。私も自家製のギーを保管して、毎年品質を調べている。だから、生鮮野菜のように、鮮度にこだわって、日本で汗を流しながら無理に手作りする必要があるとは思わない。

アーユルヴェーダ村おこし?

佐藤真紀子

だが、日本でも、マンパワーが余っているところはある。たとえば、山間の産業のない村落などでは、煎じ続けるための燃料は間伐材などで確保することができるのだから、オイル作りを産業にすることは出来るはずだ。

「アーユルヴェーダをどげんかせんといかん!」てな心意気で、立候補してくれる自治体はないだろうか?アーユルヴェーダで健康村、というような「村おこし」のプランだ。できれば、日本の薬草を使って作ることができればそれにこしたことはない。アーユルヴェーダが日本の社会にいろいろな形で根付いていくことを夢みている。

佐藤真紀子

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