アーユルヴェーダ・パンチャカルマ体験談1「インド人医師との出会い」

「インドへ行って治療を受けたら、お腹の中から黄色いカボチャプリンがドッと出てきてネ、その途端に詰まっていた栓がポンと抜けたように体が軽くなって、長年の腰痛が嘘のように治ってしまったの!」…と、ナニが何ダカわからない話を一息にまくしたてられて、たいていの友人は、目がテンになってしまう。

しかし、この夏インドで受けたパンチャカルマの体験は、興奮せずには語れないほど驚きに満ちていた。

すべては、’98年6月、東京を訪れたあるインド人医師との出会いから始まった。

サダナンダ・サラデシュムク博士(写真)は10代続いたア- ユルヴェーダ医の家系に生まれた、脈診の名手。東京に住む弟さんご夫婦を訪ねて、来日をされた折り、私はひょんなことから突然脈診のデモンストレーションをしていただけることになった。脈診を受けるには、朝起きてから水も食物も一切口にいれてはいけないという注意を守り、早朝ドクタ-をお訪ねすると、部屋にはいった途端、挨拶もそこそこに、いきなり脈診が始まった。一礼したドクタ-は私の手首を掴むと、ジッとそのままの姿勢で集中し、1分程で手をほどいた。そして驚いたことに次々と、私の症状や病歴を言い始めたのだ。

もちろん、この時までドクタ- と私は一面識もなく、この朝交わした言葉も[グッドモ-ニング]の一言だけ。さらに、服装や物腰から誘導尋問をされてはつまらないと思った私は、ガラにもなくワンピ-スなど着て伏目がちに振る舞ったにもかかわらず、彼は見事に、私の大胆な性格まで言い当ててしまったのだ。

「君は太っていない」

まず最初に指摘されたのは、生理不順の問題だった。私は喘息の治療でステロイド剤を使っていたため、初潮の時から生理が年に2~3回しかなく、ホルモン治療を受けても効果はなかった。さらに、腰痛など8項目の指摘を受けたがそのどれもが的確で、一体なぜそんなことが脈からわかるのかと驚く。だが、私は83キロもあるわかりやすい肥満体なので、体型から類推できることもあるはずだ、とも思う。さらに、仕事柄インチキな超能力番組の裏側も知っている私は、この魔法のようなワザを信用すべきかどうか迷い、ドクタ-にこんな質問をぶつけてみた。「まあ、腰が痛くてもこのデブですから、しかたありませんよね。」するとドクタ-からは思わぬ答えが帰ってきた。曰く…「君は太っていない」

????!

「あなたは太っているのではない腫れているのだ。」

これだけ立派なデブを前にして、このドクタ- は一体どこに目をつけているのか?アッケにとられていると、さらにドクタ-はこう言い放った。「あなたは太っているのではない腫れているのだ。」これを聞いた私はそんな言い方もあるものか?と、大爆笑。しかし、ドクタ-は真顔で説明を続ける。「あなたは消化の力が弱く、代謝のサイクルがよくない。だから脂肪が次のものにならず、手足では炎症が起きて腫れているのだ。」…と、いうことは…腫れならば、治療をすれば引くのだろうか?これは夏休みを潰す価値はある!そう思った私は、一ヵ月後インドへと向かった。

日本アーユルヴェーダ学会報シャーンティ・マールガ誌1998年Vol.4号に掲載された「パンチャカルマ体験談」