トゥルシーTulasi (Ocimum sanctum Linn.) 和名カミメボウキ

トゥルシーは普通緑だが、いくつかの種類があり、これは薬効が一番強いとされるクリュシナ・トゥルシー(黒いのでクリュシナの名がつけられている。写真真下)

トゥルシーの木とクリュシナ神を結婚させる…

象にのって楽隊を引き連れ、花嫁の元へ向かうターバンを巻いた新郎さん。そんな光景を町で見かけるようになったら、インドの結婚式シーズンのはじまりです。12月から1月くらいが結婚式のピーク。

インドの結婚式はとにかく派手!です。何日も続くパーティに、親戚一同が何枚もの着替えのサリーをもって集まります。(花嫁だけでなく、列席者も何度もお色直しをするのです!)ごちそうあり、音楽あり、ダンスあり!吉日ともなると、町のあちこちで大音響のパーティが夜通し行われて…睡眠不足~~~(@@)になることも、シバシバ。

でも、そんな人間様の結婚式シーズンがくる前に、大事な儀式がひとつあります。

それは各家にある、トゥルシーの木とクリュシナ神を結婚させることなんです。

木と神様を結婚させるって、ナニ??? って、思うでしょう?

町中の花屋さんでは、プージャ(儀式)に使うためにトウルシーが山積 みで売られている。純粋性が高く、浄化に役立つ聖なる植物とされて、儀式には欠かせない。

トゥルシーは、1年性の草ですが、大きく茂るので、ちょっとした低木のようになる草です。インドでは、どこの家でもベランダに1本くらいはこの木を育てていて、神聖な木としてあがめますし、薬草として、家族の健康にも役立てています。

周囲の空気を浄化し、精神的な霊性も高めるトゥルシーは葉っぱ一枚で充分

朝、トゥルシーの葉を一枚たべると風邪をひかない、病気をしない、というので、ハチミツをつけたトゥルシーの葉を子供の口の中に押し込んでやるのはお父さんの役目。抗菌作用が強く、発汗、解毒作用をはじめとして、長いリストが出来るほど、多くの薬効があるトゥルシーは、生のままで食べる、絞り汁を飲むのが一番効果的。長く煎じると香りや薬効が薄れてしまうので、お茶にする時にも、コップの中にいれた葉っぱや、葉の粉にお湯を注ぐ程度にしていただきます。これ一本あれば、周囲の空気を浄化し、精神的な霊性も高めるということで、どこの家でも大事に鉢植えが育てられています。(注:ただしラットによる実験では生殖能力が落ちるという結果も。Indian J Physiol Pharmacol. 1992Apr;36(2):109-11.大量に食べ過ぎるとピッタをあげてしまうので、1枚で充分。神話では、トゥルシーの葉っぱ1枚で、クリュシナ神の重さと釣り合うほどだと書かれているので,とりすぎないこと)

神様と結婚させてから、人間の結婚シーズンをはじめる。そして、ガラスの腕輪…

特に、クリュシナ神が大好きな木なので、クリュシナ神の化身であるヴイシュヌ神の妻ラクシュミーに見立てて花嫁衣装をつけさせ、神様と結婚させてから、人間の結婚シーズンをはじめるのです。

木の根元には、既婚者の印である赤いクムクム(色粉)でお化粧し、綿で作った軽い首飾りをかけ、木に負担にならない程度の、軽くて小さなガラスのバングル(腕輪)をつけさせます。

腕輪屋さんに行くと、こんなに小さな腕輪は、いったい誰がするんだろう?というくらい小さな軽い腕輪が隅の方で売られていますが、それはこの木のための腕輪なのです。

その昔、大家族で一緒に住んでいたインドでは、ひとつ屋根の下に、軽く20~30人、多ければ100人近い人達が一緒に暮らしていました。そんな中で新婚の夫と二人だけで過ごすのは至難の業。そこで、花嫁は家事をしながら、他の人にはそれと気づかれないように、ガラスの腕輪をシャラシャラと鳴らして、二人だけにわかる秘密の合図を送り、こっそり裏の井戸べりで逢瀬を楽しんだりしたわけです。だから、花嫁に腕輪はつきもの。

トゥルシーの木が風にゆれて、ガラスのバングルがシャラシャラ音をたてています。愛するクリュシナをよんでいるのかな….