〜人間の回復力を引き出すアーユルヴェーダ〜
骨折、3日で完治!
はっきりとMRIやCTスキャンに写っているので、折れたことは間違いないけど、なぜ治ったかは外科を三軒まわったけれども謎のまま。でも、そんな中で、凄まじく勢いのある治癒力、体の意思のようなものを感じたので詳しく記します。
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クリスマスの痛み…
そもそも今回、問題が起きたのは、クリスマスの日。
12月24日の午前3時。
ホテルのベッドの上で、私は肩の鈍い痛みで目がさめた。そして、左腕が全く動かなくなっていることに気づいた。右手で左腕を持ち上げれば動かすことができるが、うっかり支えている手を放すと左腕に裂けるような痛みが走る。
骨折とは思わなかったが、(おそらく……腱板が切れたんじゃないかな…)と、思い当たる原因はあった。2週間前インドへ来る時に、成田空港で重い荷物をグイッと持ち上げた瞬間に、腕がすっぽぬけるような感覚があって、あわてて手を離したことがあった。
だが、何も症状は残らなかった。ムンバイに到着して、翌朝に少し左腕に違和感があり、手をあげにくいような感覚は残ったものの、腫れや痛みは起きなかった。
それからアーユルヴェーダの国際学会へ参加するために、アーメダバードへ飛んだ。左腕の違和感や、上げにくさはうっすらと残っていたが、腕を後ろへまわして着物の帯を結ぶこともできた。
しかし、会議の間は毎日、パソコンと書類で3Kgをこえる重いバッグを左の肩にかけていたため、血流が悪くなって、肩関節に相当な負担をかけていたのだろうと思う。
アーユルヴェーダの治療法
私は夜明けをまって アーユルヴェーダグラムの医師、Dr.スクマール=サラデシュムクにメッセージを送った。彼は11代続く伝統医の家系に生まれ、若いけれども優秀なヴァイディヤ(アーユルヴェーダ医師)だった。
アーユルヴェーダグラムでは、宿泊施設はないけれども、近くのホテルから通いの形で、パンチャカルマや連続治療を受けることができる。
国際会議の後、私はここで腰と膝の治療を受けていた。ケララから来たセラピストたちは、一週間毎日たっぷり時間をかけて、心をこめて施術をしてくれていた。結果としては、これが早い治癒の素地となったのかもしれない。
Dr.スクマールが、私の鎖骨に沿って指をすべらせていくと、肩のちかくで筋肉が盛り上がって固まっているところがあり、肩先や腕にも同じようなコリがあって痛かった。筋痙縮(muscle spasm)によるものではないかということで、彼はスタッフにヒマの葉を取りに行かせた。
このような痛みの時には、アーユルヴェーダではヴァータの性質があがっているものと考える。
ヴァータは冷たい性質を持つので、その反対である熱い性質をもった薬草であるヒマを使うと、ヴァータを鎮めることができる。ヒマの葉のほかに骨や関節に良い2種類のオイルを混ぜたハーブボールでパトラポテリの治療が行われた。
だがしかし、私は施術の間中、ウーウーと唸りっぱなしになった。ここちよい部分もあるが、ハーブボールを押し当てる加減によっては痛みが増す。骨折だと分かっていれば、この時にやるべき治療はダーラというオイルを流す方法だった。しかし、使うべきオイルは同じなので、これが後から効を奏したのかもしれない。
Dr.スクマールは外科の専門医に電話で意見を求め、MRIとCTを撮影することとなった。ここでは、アーユルヴェーダと西洋医学が上手に連携しあっている。
MRIを撮影して2時間後には、スマホに外科医の所見が送られてきた。それによると上腕骨の頭に小豆粒くらいの剥離骨折があり、そこにくっついている筋肉と、関節の周囲にある関節唇にも損傷が起きているということだった。
インドの外科医の判断では、この状態だと石膏で固めることに意味はなく、鎮痛剤を飲んで、腕をつって安静にしておくことしかできないという。しかし、Dr.スクマールは他にも多くのアドヴァイスをくれた。アーユルヴェーダでは、こんな状況でもできることが沢山あるのだ!
アーユルヴェーダの骨折治療ーーー骨に良いこと
アーユルヴェーダで骨折の治療のために、まずやるべきことは浣腸法バスティだ。しかし、年末年始の日本でこれができるところはない。
次にできることは、骨の代謝をあげる薬を飲むこと。さらには、骨によい食べ物をとること。小麦粉、にんにく、マーシャ豆、メティ、しこくひえなどの鉄分に富む穀物や、骨髄のスープなどなどだ。食べてすぐに骨に効くわけではないが、これらのものにはヴァータを鎮める働きもあるので、痛みを軽減するのに役立つ。
治療としては、関節を構成する腱や筋肉にも良い、メダラカリなどの薬草の湿布をすること。CBLやムリベンナなどのオイルでマッサージをして、発汗させること。運動よりも安静にして、あたためること。
これらのアドバイスと薬をもらい、翌日、 私は飛行機に乗って日本へ戻った。偶然にも旅行用に小さなゆたんぽを持っていたので、フライト中はずっとこの湯たんぽで肩や体を温め続けた。
成田に到着するなり、近所の整形外科へ駆け込み、腕を吊ったままでMRIの画像を見せたが、ここでもやはり出来ることはなく、2週間の経過観察の後に痛みが残れば手術と言われた。しかし、その後、2日間で痛みは消え、腕もすっかり上がるようになってしまったのだ。
いったい、なぜ3日で治ってしまったのだろうか?
体は治りたがっている!!
日本に戻ってから、治癒の課程がわかるように、同じ服を着て毎日 腕のあがり具合を写真に撮ろうと思っていた。しかし、どんどん腕も上がるようになり、27日の夜には、まったく普通になってしまったので、あわててパジャマのままで撮影したのが下の写真だ。
朝よりも昼。昼よりも夕方。と、刻々と体の修復が進んでいく感じが伝わってきて、手のあがりもどんどんよくなっていった。
特に12月27日には、まるで植物の種がニョキニョキと芽を出す時のように、体の中で何かが育っていくような強い力の働きを感じた。肩のところに龍のような生き物がいて、うねりながら患部を治癒しているような、不思議な感覚だった。
私にできることは、体が治りたがっているのを邪魔しないようにするだけだった。
それはまるで、私の意思とは関係のない「肉体」という生き物がはっきりと「治ろう」という意思表示をして動いているように感じた。これは一体なんなのだろうか?
温める治療法が回復を加速?!
今回のことに 影響を与えていそうなことを全て並べてみる
1) 10月から骨の代謝をよくするアーユルヴェーダの薬を飲んでいた。
2) 直前の一週間、腰と膝のために、オイルマッサージなどの全身治療を続けていた
3) 12月24日 西洋医学の痛み止めを1錠だけ飲んだ
4) 12月24日 ムリベンナとCBLオイルによるハーブボールの治療を受けた
5) 12月25日 飛行機に乗って8時間安静にして、ゆたんぽで温め続けた
6) 12月26日、27日 アーユルヴェーダ的に骨を治すのによいものを食べた
7) 12月24日~27日 アーユルヴェーダの骨の治療薬を飲んだ
8) 12月26日~27日 アーユルヴェーダの薬用オイルを塗って入浴した
9) 12月27日 温泉へ行った(有馬療養温泉)
10) 12月24日~27日 腕を吊って安静を保った
11) 痛みはあっても、不安が全くなかった
2、4、5、8、9 は全て患部を温める治療法だ。
西洋医学的には、急性期で炎症がある時には、温めることは禁忌である。だが、アーユルヴェーダでは逆で、急性期にオイルを使って温める治療をすすめることがある。症状としては、むしろ悪化したように感じるが、治りは早い。今回はまさにこれだったのではないかと思う。
たとえば、やけどの時にも、冷やすのではなくて、温めることをすすめる場合がある。これはものすごく痛い。しかし、やけどの治りは早くなる。なぜならば、炎症をおこして腫れるということは、そこに体液が集まってきて、バイキンと戦ったり、そこの組織を作り変えるために戦ったりしているわけで、温めることでより多くの体液をそこに送り込んでやれば、修復の過程を早くすぎさせてやることができるからだ。
まさに、肉体がやりたいと思う方向へ手助けしてやることなのだ。
パンチャカルマをしている時にも、今回のように、肉体が自分とは違う意思をもった生き物のように感じることがあった。
肉体という生き物が、毒を吐き出すことを できるだけ助けてやるように、邪魔しないように、上手に食事や薬でコントロールしていくのがアーユルヴェーダの治療法だ。
Dr.スクマールのところでは、自分たちの製薬工場で妥協のない材料を使って純粋なアーユルヴェーダの薬やオイルを作っている。その薬の中で、骨の代謝をよくするための薬を二ヶ月も飲んでいたことや、24日までの一週間、彼らの薬用オイルをたっぷり使った治療を受けていたのも、早く治る素地を作っていたように思う。アーユルヴェーダの治療は加齢を遅らせて、病気を予防する。治療イコール予防でもあるのだ。
インドでも、日本でも、西洋医学の外科医には腕を吊って安静にする以外にできることはない、と言われたが、アーユルヴェーダには、やれることがたくさんあった。
どれが効いたのかはわからないが、こうして手助けをすることで、肉体が本来の治癒力を発揮できたのかもしれない。それは、自然治癒力などというぼんやりした生やさしいものではなくて、とてもハッキリと、肉体の中でうごめく力だった。
それにしても3日は早すぎる!!
2019年1月7日 川崎市の整形外科医院にて。
「あけましておめでとうございます」と、私が元気よく、正月明けの診察室へ入ってきたのを見て、医師は、驚いて、前回の診療記録を見直した。
年末、成田空港から直接この病院へやってきた時には左腕を吊るして、服を脱ぐ時にも看護師さんの助けを借りて、痛みに唸ったりもしていた。
それが今は両手に荷物やコートをもって現れたのだから無理はない。
医師:ええっ?…..どう….なりました???
佐藤:それがですねえ..どんどん良くなって3日で治っちゃいました。今はすっかりこの通りです。
私は、腕を上げたり降ろしたり回したりしてみせた。
医師:えええ〜っ!早いっ!僕がいままでみた患者さんの中で一番早いですよ!
初老の医師の長い診療経験の中でも、最短記録を更新したらしい。
佐藤:私の怪我の場合、普通はどのくらいかかるものですか?
医師:最低でも6ヶ月、ひどければ一年くらい痛みが残ったりする人もいますから、今日は肩の専門医に紹介状を書くつもりでいたんですけどねえ…。
佐藤:…..ってことは…、これ、奇跡ですかね?
医師:イヤイヤイヤイヤ〜〜〜〜ア!
医師はそう言って笑った。否定してもらってホッとした。医者は科学者だ。簡単に奇跡なんて認めてもらっては困る。
佐藤:じゃあ、最初の診断が間違っていたってことはないですかね?
医師:それはないですよ。だって、MRIの所見に書いてありましたよね、剥離骨折って。
佐藤:書いてあっても、その、MRIの読み取りをしたインドのドクターの間違いってことはないですか? 先生がご覧になっても、画像の中に、ちゃんと骨折の様子が映っていましたか?
医師:ありましたよ。それにね、インドだからってバカにしちゃいけない。インドの医療は大したものですよ。正直、僕はこのMRIと所見をみせられて驚きました。やはり世界中から治療に来る人たちがいるってだけのことはあるな、と…
先生は熱くインドの医療について語りだしたが、私が3日で治った謎は解けないままだった。
そのあとで、同じ画像を持って、肩の専門医を訪れた。その医師はMRIでは見えないけれども、CTスキャンには、はっきりと折れた骨片が写っていると言って、その画像を示してくれた。(残念ながらスマホでその画像を撮影することを忘れてしまった…)そして、肩をいろいろな方向に動かして、完治していることを確認した。
骨がくっついたのかどうかはわからない。だが、少なくとも2週間から一ヶ月は痛みが残って、動きが制限されるはずだけれども、3日で治ったことに関しては、わからないと首をかしげるだけだった。
さらに一ヶ月後、インドを再訪した私は、もう一度MRIとCTを撮影して、骨折がきちんと治っていることを確認した。インドの外科医の話では、もともと小さな2種類の筋肉が付着している部分で、折れてもそれほど動きには影響がなかったのではないかということだった。だがしかし、それでは腕があがらなくなった説明がつかないし、3日でそれが治ったことも説明ができない。
結局、どこでみてもらっても3日で治った謎は、ハッキリとはわからなかった。ただ、それがどういう理由であろうと、骨折と周囲の組織の断裂があったことは間違いなく、それがたった3日で痛みなく、不自由なく過ごせたのは、アーユルヴェーダのおかげだと思う。
* Dr.スクマールの次回の来日予定は4月27日から5月7日
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